■閉鎖経済と開放経済
1国の経済は、外国との取引(貿易取引や金融取引)のない閉鎖経済と、外国との取引のある開放経済に分類される。現在、殆どの国は開放経済。
■GDP統計の集計・公表
GDPは三面等価(生産・支出・分配)のため、3つの切り口から分解できる。生産面は産業セクター別、支出面は経済主体別(民間・企業・政府・純輸出等)、分配面は労働賃金・資本コスト・減価償却費の3つの切り口である。GDPは販売統計等より支出面が最も早く集計・公表され、続いて生産面、分配(所得)面の順番で揃う。
■国内総生産(GDP) ※支出面
1国の経済活動水準を図る尺度として国内総生産(GDP)が使用される。GDPとは一定期間内に国内生産された全ての最終財・サービスの市場価値の合計であり、我々の生活水準や景気変動を反映するマクロ経済指標である。供給側から見る時は総供給(国内総生産)、需要側から見る時は総需要(国内総支出)と呼ばれる。
開放経済(鎖国状態でない)においてGDPの需要側の経済主体での内訳を示す恒等式は次の通り。※閉鎖経済ではXは生じない。
Y=Cd+Id+Gd+X・・・①
Y:GDP(国内総支出)
Cd:国内家計が購入する国内生産物(国内家計の国内生産の消費材購入)
Id:国内企業が購入する国内生産物(国内企業の国内生産の投資財購入)、家計が購入する新規住宅投資も含む。
Gd:自国政府(中央政府や地方政府等)が購入する国内生産物、移転支払(社会保障給付金や年金)は含まない。
X:輸出、外国(客体区別せず)が購入(輸入)する国内生産物、もしくは外国へ輸出される国内生産物
経済主体により総需要は内需(Cd,Id,Gdの3つの国内需要)と外需(Xの外国需要)に分けられる。
より現実的には経済主体別の購入物品には国産品に縛られず、外国生産物(輸入品)も含まれるので、輸入品(M)も考慮した形に書き換える。
C=Cd+Cf、Cは民間消費(国内家計が購入する生産物)、Cfは国内家計が購入する国外生産物
I=Id+If、Iは民間総投資(国内企業が購入する生産物)、Ifは国内企業が購入する国外生産物
G=Gd+Gf、Gは政府支出(財政支出、自国政府が購入する生産物)、Gfは自国政府が購入する国外生産物
①は次のように書き換えられる。
Y=(C-Cf)+(I-If)+(G-Gf)+X
=C+I+G+X-(Cf+If+Gf)
経済主体を区別せず輸入をM(=Cf+If+Gf)と置くと、
Y=C+I+G+X-M
=C+I+G+NX
NX=X-M、純輸出を表す。
※外国取引(輸出・輸入)の詳細は国際収支統計を調べる。
■総需要(GDP)の変動要因
総需要の経済主体のうち民間消費(C)と政府支出(G)は、基本的にパッシブな要因であり、総需要変動の原因とは言いにくい。CとGは既存のモノ・サービスへの消費であり、将来見通しに依存しないためである。但し政府支出は財政政策(財政出動や税金)によりアクティブな面もある。一方、民間総投資(I)と純輸出(NX)は総需要変動を引き起こすアクティブな要因と言える。
民間総投資(は、将来収益見通し、技術革新、将来賃金見通し、期待実質金利に依存して変動する。
■総需要(GDP)に対する生産調整による均衡
国内総生産は、総供給と総需要が等しくなるように決定される(→45度線モデルなど)。他の事情(金利や為替レート等)に変化がなければ国内総生産は変化しないと考える。総供給の経済主体と総需要の経済主体(個人と企業)は一般に異なるため、総供給と総需要は必ずしも一致しない。
供給側は価格調整や生産量調整(在庫調整)を行うことで総需要に対応する。一般に総需要<総供給の状況において、物価はあまり下がらず、生産量が減少する場合が少なくない。また物価も卸売物価(生産者と流通業者)と消費者物価(流通業者から消費者)があり、価格調整は卸売物価でなされることが多い。