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経済系掲示板_45度線モデル


■45度線モデル ※GDP=C+Iの場合 消費と投資を考慮

GDP(国内総生産)推定のための最も単純なマクロ経済モデル。制約条件は次の2つからなる式。

■総需要(Yd)と総供給(Ys)は一致:Yd=Ys・・・① ※但し、総需要主導(デマンド・ドリブン)で総供給は常に総需要を満たすよう従属的に振る舞うとする。

■GDPの総需要式(Yd=C+I)に供給要素を埋め込み、立式し直す。

ここで単純化したC(消費)とI(投資)の2変数のみで考える。※ここで"消費"とは「個人が行う消費」、"投資"とは「企業が行う消費(設備投資)」をイメージする。

CとIによる総需要式の変形:Yd=C+I→(Ca+cYs)+I・・・②

Cを衣食住の最低限必要な固定消費(Ca)の部分と、所得(国内全体はYs)依存の追加的な消費部分(cYs)に分解。依存の連動係数cは限界消費性向と呼ぶ。日本であれば約85%程度であり、残りの15%程度が消費に回さずに貯蓄に向かうもので、s(=1-c)を限界貯蓄性向と呼ぶ。

 

①と②を組み合わせる。①よりYdとYsは区別する必要がないのでY*として表す。

Y*=Ca+cY*+I

↔(1-c)Y*=Ca+I

↔Y*=1/(1-c)×(Ca+I)

↔Y*=1/s×(Ca+I)・・・③

 

③に適当な数字を入れて試す。

企業部門の設備投資が60兆円(I=60)、最低限の民間消費が120兆円(Ca=120)、限界消費性向が0.9(c=0.9)とする場合、推定GDP(Y*)は、

Y*=1/(1-0.9)×(60+120) =180/0.1=1800兆円 ※2016年頃のアメリカの実態に近い。

0.1は限界貯蓄性向であり、1/s=10となる。貯蓄せずに、消費する国民性であるほどGDPは大きくなると言える。日本はs=0.15で1/s=6.66程度で、アメリカよりも低い。日本のGDPは500兆円程度であり、仮にアメリカ程度のsの国民性であれば750兆円程度のGDPに達すると思われる。

 

景気が上向き始めて、企業が設備投資(I)のペースを速める(ΔI)ことで、I→I+ΔIになった場合の推定GDP(Y**)は、

Y**=1/s×(Ca+I+ΔI)となり、Y*(=1/s×(Ca+I))との差分(GDPの変化額)をとると、

Y**-Y*=1/s×ΔI

つまり設備投資の増加分(ΔI)は、限界貯蓄性向の逆数(1/s)の乗数となり、GDPの増減に影響を与える。1/sは国民性に依存するので、日本とアメリカでは同じ程度ΔIが変化しても、GDPに与える影響は異なってくる。

■45度線モデル ※GDP=C+I+Gの場合 政府部門も考慮 国際取引のない閉鎖経済のGDP式

続いて、より現実的なGDPの総需要式になるよう政府部門のGを考慮する。Gにより政府の財政政策の効果がGDPに与える影響を推定可能になる。

■GDPの需要式(Yd=C+I+G)に供給要素と税要素を埋め込み、立式し直す。

・税金を定額(T)とする場合

Yd=C+I+G→(Ca+cYs)+I+G→Ca+c(Ys-T)+I+G・・・④

①と④を組み合わせる。①よりYdとYsは区別する必要がないのでY*として表す。

Y*=Ca+c(Y*-T)+I+G

↔Y*=1/s×(Ca+I-cT+G)・・・⑤

 

・税金を所得比例(tYs)とする場合

Yd=C+I+G→(Ca+cYs)+I+G→Ca+c(Ys-tYs)+I+G・・・⑥

①と⑥を組み合わせる。①よりYdとYsは区別する必要がないのでY*として表す。

Y*=Ca+c(Y*-tY*)+I+G

↔Y*=1/(s+ct)×(Ca+I+G)・・・⑦

 

■消費増税がGDPに与える影響

政府が消費税増税(所得比例でないので④を使用)を行い、価値移転でしかない社会保障費に回せばGDPは低下する。

消費増税後:Y**=1/s×(Ca+I-c(T+ΔT)+G)

消費増税前:Y*=1/s×(Ca+I-c(T)+G)

変化:Y**-Y*=1/s×(-c(ΔT))

 

一方、政府が消費税増税(所得比例でないので④を使用)を行い、それを原資に財政出動(ΔT)を行う場合はGDPは上昇する。※均衡財政乗数の定理と呼ぶ。

消費増税後:Y**=1/s×(Ca+I-c(T+ΔT)+(G+ΔT))

消費増税前:Y*=1/s×(Ca+I-c(T)+G)

変化:Y**-Y*=1/s×(-c(ΔT)+ΔT)=1/s×(sΔT)=ΔT

 

よって消費増税がGDP成長に良いか否かは、それを原資に政府が財政出動を増やすかどうかに掛かっている。消費増税が批判的である理由は政府が財政出動のために消費増税を行っておらず、全く関係ない社会保障費など充てる、つまり財政出動をしないことである。

■45度線モデル ※GDP=C+I+G+NXの場合 国際的な貿易・サービス収支を考慮 国際取引のある開放経済のGDP式

国内総生産(GDP)は国内の生産かつ消費の付加価値の合計である。需要面から見た場合、外国産品の消費(輸入分)はGDP対象外であり、国産品の輸出はGDP対象内である。したがってIMF加盟国のような国際取引が盛んな開放経済では、GDP推定式に貿易・サービスに関する純輸出(NX=X-M))を考慮する必要がある。

■GDPの総需要式(Yd=C+I+G+NX)に供給要素と税要素を埋め込み、立式し直す。

・税金を定額(T)とする場合

Yd=C+I+G+NX→(Ca+c(Ys-T))+I+G+(X-mYs)=(Ca+I+G+X)+c(Ys-T)-mYs・・・⑧ ※輸入量M=mYsは所得比例とし、mは限界輸入性向と呼ぶ。

①と⑧を組み合わせる。①よりYdとYsは区別する必要がないのでY*として表す。

Y*=(Ca+I+G+X)+c(Y*-T)-mY*

↔Y*=1/(s+m)×(Ca+I-cT+G+X)・・・⑨

 

・税金を所得比例(tYs)とする場合

Yd=C+I+G+NX→(Ca+c(Ys-tYs))+I+G+(X-mYs)=Ca+I+G+X+Ys(c-ct-m)・・・⑩

①と⑩を組み合わせる。①よりYdとYsは区別する必要がないのでY*として表す。

Y*=Ca+I+G+X+Y*(c-ct-m)

↔Y*=1/(1-c+ct+m)×(Ca+I+G+X)=1/(s+ct+m)×(Ca+I+G+X)・・・⑪

※ここでs,c,t,mは全て総生産(総所得)であるYsの比例定数(乗数)であることを思い出すこと。

■閉鎖経済と開放経済の違いがGDPの与える影響

⑪式を見ると、Y*=1/(s+ct+m)×(Ca+I+G+X)。

つまり国際取引による貿易・サービス収支の発生によるGDPの変化を推定可能になる。

国内の余剰生産能力によって内需以上に作られた製品を輸出に向けて、貿易黒字(外貨を稼ぐ)となる国。例えば高度経済成長期の日本やドイツ、世界の工場である中国等)でが該当する。